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  3. 小倉記念病院 脳卒中センター長 「受診のハードル下げる健康講座。新たな取り組みには牽引役が必要」

波多野 武人 先生

小倉記念病院 脳卒中センター長
「受診のハードル下げる健康講座。新たな取り組みには牽引役が必要」

先生は、市民向け出張講座での講演に熱心に取り組まれているそうですね。
参加者が10人前後の集まりまで含めると、院外でお話しする機会は月一回を大きく超えています。北九州市内はもちろん、市外でも当院へ救急患者が搬送されてくる地域なら出かけるようにしています。私は脳神経外科なので、脳卒中の初期症状等について市民の方を啓発し、あわせて当院は体への侵襲が少ないカテーテル治療など、先端の医療技術を提供できると伝えることで、いかに早く来院してもらうかが大事だと考えています。 予防や早期発見にも取り組んでいる病院だとわかってもらうことで、いざと言う時、患者さんに選ばれるようになると思います。脳神経外科関係の出張講座は、私がほぼ一手に引き受けています。直接担当患者を持っていない管理職の立場なので、院外に出やすいためです。当科にはやる気のある若い医師が集まっており、幅広い症例を経験したがっています。市民向けの講座をきっかけに、様々な疾患、状態の患者さんが受診してくれているので、 部下の医師たちも快く行かせてくれます。
出張講座に寸劇を取り入れるなど、プログラムも工夫していると聞きました。
男女ペアで夫婦役を演じる寸劇は、脳卒中リハビリテーション認定看護師のアイデアです。参加者の方々に与える効果が全く違いますね。最後まで楽しそうに笑いながら見ていますから、普通の講演に比べ内容がずっと頭に残るはずです。私は講座の際の参加者からの質問や反応を参考に、講演内容を少しずつ改良していますが、その際には松本さんにも相談しています。市民の目線に立って、医学的知識をわかりやすくプレゼンする知恵を出してくれますし、 ディスカッションできる相手がいるのも助かります。特に当院は、市民から受診のハードルが高いと思われているようなので、参加者との距離が近い出張講座を機にイメージを変えたいところです。寸劇で「少しでも怪しい症状が出たらすぐ来院してほしい」と強調したり、事務方が「いつ飛び込みで来てもしっかり診察する」と説明してくれることで、受診への抵抗感が和らいでいるのではないでしょうか。実際、「講座を聞いた家族に勧められた」などと言って受診する患者さんもいます。
病院の講堂で開催している市民公開講座には、どう取り組んできましたか。
私自身は医者目線で話すのは避けたいので、専門用語は極力使わないようにして、動画をスライドに入れるなど工夫していますが、なかには居眠りする人も見受けられますね。スライド作りの際に、参加者が退屈しないよう事務方から市民目線に立ったアドバイスがあれば役立ちますし、私自身もそれで助けてもらっています。コロナ禍で新たに始めた市民公開講座のYouTubeライブ配信については、参加者の反応が見えないのは気になりますが、特にやり方は変えていません。 こうした新しい取り組みは、誰か背中を押してくれる人がいないと、なかなか踏み出せないのではないでしょうか。
市民向けの講座は、受診患者の増加に貢献していますか。
患者さんから「紹介するなら小倉記念病院に」と依頼されて、紹介状を書く開業医の先生も増えてきていますので、当院の脳神経外科の認知度は向上してきているのでしょう。ただし、せっかく受診してくれても、その時診察した医師が雑な対応をするようでは何にもなりません。それを防ぐために一役買っているのが、市民向け講座の開催報告の各部署への回覧です。患者さんに選んでもらうために地道な努力を続けていることを多くの医師に知ってもらえますし、他の診療科にも良い刺激になると思います。

書籍「小倉記念病院のV字回復に学ぶ 最高収益を生み出す病医院マーケティング」より1部抜粋